チャーハンノート

チャーハンの作り方に関する覚書

データロガーの作成 その2(測定編)

前回、Arduinoのパチモンを使ったデータロガー機能付きUSBチェッカーを作成しました。 これを使ってモバイルバッテリーの充放電時の容量を測定しようとしたのですが、ある問題に直面してしまったためプログラムの見直しをしたついでにロガー本体も作り直しました。

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評価内容

当初やろうとしていたことは、自家用車のダッシュボードにソーラーチャージャーを設置(放置)して、モバイルバッテリーを充電するときの充電過程を記録するということでした。
構成としては下図のようなものです。 f:id:friedrice_mushroom:20200906172716p:plain

データロガー用の電源として最初に用意したのはCheero Canvasという製品です。

www.amazon.co.jp

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この製品はIoT機器対応を謳っていて、マイコンのような低消費電力のものを接続していても電力供給が自動ストップしません。 このような仕様はマイコン用途には最適ですが、個人的にいま一歩と思うところがありました。それは「容量が少ない」ことと「パススルー充電ができない」ことです。(※限りなく個人的な用途に対しての見解です)

自作データロガーの消費電力は5Vで20mA程度つまり0.1Wです。Cheero Canvasの容量は3.7V平均で3200mAhということで、電力換算だと11.84Whです。データロガーを連続動作できる時間は単純計算で118.4時間、約5日です。
さらに、現実的にはリチウムイオン電池の(平均)3.7VからUSB機器用の5.0Vへ変換する過程でエネルギーの損失が発生します。それを30%とすると、連続使用できるのは82.88h(3.45日)ぐらいになります。ちょっと心許ないです。

たとえ容量が少なかったとしても、たまに他の電源から継ぎ足すように充電ができればまあOKです。そういった機能はパススルー充電などと呼ばれます。 Cheero Canvasの場合、データロガーに電力を供給している状態で充電用のUSBケーブルを接続すると、一瞬だけオフになります(瞬断)。このとき、データロガーは再起動してしまいます。そして、そのUSBケーブルを抜くとCheero Canvasは電力供給を停止します。

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期待していた動作は、電力供給中にUSBケーブルを接続してもOutputは瞬断せず、さらにUSBケーブルを抜いてもOutputは出力し続けるというものでした。

データロガー用の電源周りに関して、具体的に想定していた動作はこうです。

・エンジン停止中の大半の時間はモバイルバッテリ経由でデータロガーが動作
・エンジン稼働中はシガーソケットのUSBチャージャー経由でモバイルバッテリーとデータロガーの両方へ電力供給を行う
・エンジン停止/稼働の切り替わり時、モバイルバッテリーはオンし続ける(オフしない)

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とはいうものの、そもそも電力を供給しながら自身も充電できるようなモバイルバッテリーが稀で、このような使い方は発熱・発火のリスクがあるため仕様に入れないことは妥当なことです。
手持ちのいくつかのモバイルバッテリーを試した限り、電力供給中にUSBケーブルを接続すると瞬断するか出力が完全にオフになるかのいずれかの動作をしました。
これは決してモバイルバッテリーとして利便性に欠けているのではなく、電力の入力/出力を安全に切り替えるための適切な動作をした結果と推測します。

対策について

データロガーの電源問題については、データロガー専用の電源を自作することで対策としました。自作とはいってもAmazonに売られているモジュールを組み合わせただけのものです。 ・・・基本的に非推奨なことばかりを書き連ねています。詳細は省きますが、大まかな構成は下記3つです。

・ 18650バッテリ
・ Lipo充電モジュール
・ DCDCコンバータ(昇圧型、5.0V出力)

データロガー用の電源も用意できたことにして、モバイルバッテリー評価の最終的な構成は下記のように定まりました。 f:id:friedrice_mushroom:20200906172942p:plain

測定対象(モバイルバッテリー)について

今回、容量の測定を試みるモバイルバッテリーは、RAVPowerのRP-PB201という製品です。容量は20000mAhで、購入当時の価格は8000円くらいでした。

www.amazon.co.jp

同程度の容量のものは他社の安価(Ankerではない)なものが無数にありますが、決め手だったのは60WのPD(Power Delivery)に対応していることでした。ノートPCを余裕で充電することができます。
なお、今回使ったモバイルバッテリー(RAVPower RP-PB201)はソーラーチャージャーで充電することができましたが、モバイルバッテリーによって相性がありそうです。
例えば当方の所有しているAnkerのバッテリー(Anker PowerCore III Elite 25600 60W)では、データロガーを介さずしてもソーラーチャージャーで充電することができませんでした。 そういう意味でこのRAVPowerのバッテリーは貴重な製品かもしれません。

ちなみに、リチウムイオンバッテリーを炎天下の車内に放置することは大変危険です。最悪の場合は発火の恐れもあります。自分の場合は車内の各所の温度を確認した結果、グローブボックス(助手席にある収納庫)内であれば安全に使用できる温度範囲内であると判断した上で運用しています。これは車種によっても状況が異なるため、事前の確認が必須です。

測定対象の充電方法について

充電方法としては、ソーラーチャージャーを準備しました。ここではUSB端子がついたソーラーパネルのことです。自分が購入したのはSuaokiというメーカの28W仕様の製品です。

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この製品は折りたたみ式で、車のダッシュボードに置くのに丁度よいサイズでした。
出力28Wと謳っていますが、ダッシュボードにおいた場合はそれほどでもありません(当然ですが)。市販のUSBチェッカーで確認すると、直射日光があたっているときでせいぜい2〜4W、良くて5W程度です。
現在は在庫切れとなっていますが、有象無象のメーカーから同様の製品が販売されています。あまりに安価(Ankerではない)なものは推奨しませんが、たぶん大方のメーカーはソーラーセルを同じメーカーから調達していると思われるので(似ているので)、主要メーカーのものと同じ価格帯、ソーラーセル数のものから絞っていけばだいたい同じような性能だと思います。

データロガー3号機の作成

データロガー本体について、今回新たに3号機を作成しました。 上記の対策を踏まえたわけでもなく、たまたまSeeeduino Xiaoというマイコンを見つけたのが主な理由です。完成品の仕様は2号機とほとんど一緒です。

左が3号機、右が2号機です。 f:id:friedrice_mushroom:20200906173036p:plain

2号機→3号機の主な変化点は、

マイコン: SAMD21 M0-Mini → Seeeduino Xiao
・ロギング用のUSB入出力端子をType-Cに統一
・マイクロSDカードスロット: レベルシフタ付き基板からDIP変換基板(サンハヤト製)に
・電源用コネクタを追加
・スタンバイモード適用の選択スイッチ追加

などです。
ボタン類はL型のスライドスイッチに統一して、スモーキーなアクリル板のカバーを付けられるようにしてみました。 f:id:friedrice_mushroom:20200906173106p:plain

作り直したきっかけは、先述のとおりSeeeduino Xiao というマイコンが発売されていたのを知ったことです。

jp.seeedstudio.com

これは前回の2号機で使ったSAMD21 M0-Miniと同じく、Arduino M0と互換性があります。
2号機で使ったSAMD21 M0-Miniは今現在、入手性に難が出てきています。Amazon Primeで購入できるものは2万4千円と高額です。マケプレでは千円台のものがありますが、納期に2週間ほどかかるものが大半です。おそらく中国から直接取り寄せています。

その点、Seeeduio Xiaoは秋月・スイッチサイエンス・マルツ等で購入することができ、入手性は問題ありません。価格も700円程度と安価です。

見たまんま非常にコンパクトですが、SPIも対応しているのでSDカードライブラリも扱うことができます。

なおSeeeduino XiaoのGPIO電圧は3.3 Vです。今まで使っていたマイコンは5Vのものがほとんどでしたが、大半のセンサモジュールは3.3Vに対応していたので問題ありませんでした。
また、SDカードのI/Oは3.3V仕様のため、シフトレジスタが内蔵されたSDカードモジュールも不要となり、秋月にあるようなSDカード-DIP変換基板だけでOKになりました。おかげで幾分か小型化することができました。

プログラムについても多少変更点があります。
夜間はスタンバイモードに遷移するようにしました。具体的には、入力電圧が一定未満のときは1分間のスタンバイモードに入るようにしました。1分後はまた起動しますが、またそのとき入力電圧が一定であれば同様の動作を繰り返します。
これによりデータロガーの消費電力を大幅に減らすことができました。

なお、人様のプログラムをそのまま参考にしてしまったためソースコードは公開できません。参考にさせていただいたのは下記の記事です。(ありがとうございました)
zattouka.net

測定結果

自家用車のダッシュボードにソーラーパネルを、グローブボックスにモバイルバッテリーを放置して、ある期間の発電量を測定したのが下記のグラフです。

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充電(測定)開始から6日目たったところ、ソーラーチャージャーの出力電圧が5Vを超えているにも関わらず電流値がほぼ0Aとなりました。
これはモバイルバッテリーの容量が満タンになったため、電流を供給できなくなったことを意味しています。つまり、充電開始から5日目でフル充電ができたことになります。
6日目の積算容量は92.5Whでした。メーカーの仕様では電力容量は74Whのため、充電中の効率は約80%となります。すこし効率が良すぎるような気がします・・・あまり正確ではないのかもしれません。

まとめ

ようやく、ソーラーチャージャーをつかったモバイルバッテリーの充電結果についてまとめることができました。
天気の良い日が続けば、20000mAhのモバイルバッテリーは1週間でフル充電ができるということがわかり、安心感が得られました。

そもそも、自家用車の中で、ソーラーチャージャーを使ってモバイルバッテリーを充電したいと思ったきっかけというのがあります。
以前はお出かけ先にPCを持参することがよくあったのですが、図書館や喫茶店にもっていったときに電源が使えないことがよくありました。
そういうときの非常電源として、PCを充電可能なモバイルバッテリーがフル充電で常備されていることが理想でした。そこで考えたのが、ソーラーチャージャーを使うという方法でした。

ただ、現在はコロナ禍真っ只中のため、これらのバッテリーを使う機会が全くありません。
それでも、駐車場に停めるときはかならず南向きにしたり、日々の天気を多少気にするようになったり、日常生活の多少の楽しみは増えたような気がします(気がします)。

このような備えは、この先の万が一の災害時にも重宝すると思うので、今日は今日とてバッテリーを充電し続けます。

ご安全に。